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非標識でリアルタイムに観察可能な化粧品機能性成分の皮膚浸透評価の受託試験をスタート

株式会社マツモト交商(本社:東京都中央区、代表取締役社長:松本俊亮)は、国立大学法人東京農工大学大学院工学研究院 伊藤輝将准教授、三沢和彦教授(東京農工大学 副学長)との共同研究で確立した、化粧品製剤中に含まれる機能性成分の皮膚モデルへの浸透性を非標識で直接的に評価する試験を2023年2月(見込)より受託開始いたします。本試験を活用することにより、化粧品製剤や化粧品原料の開発への貢献が期待されます。

本研究内容は、Wiley-Blackwell刊行の論文誌『Skin Research and Technology』に2021年10月7日に掲載されております。
論文名:Time-course quantitative mapping of caffeine within the epidermis, using high-contrast pump–probe stimulated Raman scattering microscopy
著者名:Risa Iguchi, Yoji Nishi, Tsuyoshi Ogihara, Terumasa Ito, Fumiaki Matsuoka, Kazuhiko Misawa
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/srt.13088

受託試験に関しての位置付け
マツモト交商は、大学など研究機関の科学知識を産業の発展に活用するための事業として、試験受託業務を開始します。その最初の事例として東京農工大学三沢研究室のPM-SRSを活用した皮膚浸透動態観察技術の研究成果の情報開示をしてきました。これまでの研究成果から化粧品製剤や薬剤の皮膚浸透動態の観察をするノウハウを蓄積してきており、このような研究テーマに貢献すべく依頼いただけるサービスを提供していきます。

テクノロジー
皮膚は外界にさらされた組織であり、外部からの異物の侵入や体内からの水分蒸散を防ぐ重要なバリア機能を担っています。それにより、化粧品などを皮膚の外から適用しても、十分量を皮膚に浸透させることは困難とされます。化粧品中の成分がどの程度皮膚に浸透したかを評価するためには、これまでは検出感度の高い蛍光物質などで実際の成分を代替したり、標識したりすることで評価をしてきましたが、実際に配合される成分を直接検出することは困難でした。従来、ラマン散乱という物質特異的なシグナルの検出を利用して、成分を直接検出する技術が開発されてきておりましたが、皮膚中の成分の検出においては、皮膚由来の成分に起因するノイズのシグナルによって高感度での検出に限界がありました。

本試験内容
本試験では、波形整形パルスを用いた位相変調誘導ラマン散乱(PM-SRS)顕微鏡の技術〔2017年4月25日東京農工大学プレスリリース〕を応用する事で、従来のラマン顕微鏡よりも高い感度と速度で化粧品中の成分を非標識検出することを可能にしました。図1は、皮膚モデルとカフェイン水溶液のラマン散乱スペクトルを、従来のラマン散乱法と本研究の位相変調誘導ラマン散乱(PM-SRS)法とで測定した結果を比較したものです。従来の測定法では、測定対象物質であるカフェイン固有の信号以外にも皮膚モデルや水溶液から発生する背景信号が検出され、その結果、目的信号と背景信号との比率が悪くなってしまいます。それに対して、本研究のPM-SRS法では、皮膚モデルや水溶液からの背景信号が大きく抑制され、測定対象物質に対する高い感度が得られます。さらに、図2では、皮膚モデルの表面に塗布したカフェイン分子が時間経過とともに、皮膚の内部に浸透していく様子を可視化したものです。この可視化は、非標識・非接触・非破壊で観測できるという特長を持つラマン散乱顕微鏡において、背景信号を抑制し目的信号のみが取り出せるPM-SRS法によって初めて可能になりました。 これにより、様々な成分が配合される化粧品製剤を塗布した場合にも、機能性成分であるカフェインの皮膚モデルへの浸透性を測定することができることを確認しております。

図 1 皮膚モデルとカフェイン水溶液のラマンスペクトル測定
(A)従来のラマン散乱法、(B)位相変調誘導ラマン散乱(PM-SRS)法

図 2 皮膚モデルへのカフェインの浸透性
(左)カフェイン水溶液塗布 10 分後 (右)カフェイン水溶液塗布 360 分後 スケールバー=50µm

用語解説
・波形整形パルス
レーザーパルスを回折格子等を使って光の波長ごとに分割し、液晶素子等を用いて波長ごとに光の位相を制御することで、目的の時間波形を持つ光パルスを生成する技術。

・誘導ラマン散乱顕微鏡
集光したレーザーを試料に走査して画像を得るレーザー顕微鏡の一種。瞬間的に光るパルスレーザーを試料に照射して分子振動を強制的に開始させ、そこにさらにもう1つのレーザーを照射すると、分子の振動数の分だけ周波数がずれた新しい信号光が放出される。この信号光の周波数から分子固有の振動数を、信号の強さから濃度をそれぞれ測ることができる。染色が不要なラマン顕微鏡の中でも、特に高い分子識別能と感度を持つ。

2017年4月25日東京農工大学プレスリリース〕 染色不要で小さな分子の濃度分布を撮影できる顕微鏡を開発~レーザ1台で動作するコヒーレントラマン顕微鏡の撮影速度を200倍以上高速化~
https://www.tuat.ac.jp/outline/disclosure/pressrelease/2017/20170425_01.html

◆問い合わせ先◆
株式会社 マツモト交商 安全性試験部
TEL:03-3241-5162
e-mail: safety@matsumoto-trd.co.jp

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